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てげてげブログ
2014-05-09

593) 聖灰の暗号

小説をハードカバーでは読まない。文庫本になるまで待つというのが私流だ。文庫本は安価である。電車やバスの中で読みやすい。一方で、世間で評判になった時期から数年遅れて読むことになる。

先日、本屋ブラブラを楽しんでいた時、帚木蓬生の『聖灰の暗号 上・下』という新しい文庫本を見つけて買った。

帚木蓬生は好きな作家だ。過去の一時期、はまって読み漁った時期がある。彼の書いた小説で文庫本になったものはほとんど全部読んだ。帚木は北九州在住、中間市でクリニックを開業する精神科医である。そんな身近な存在であることも、彼にはまった一因かもしれない。


物語は若い日本人の歴史学者が、南フランスの図書館でカタリ派(キリスト教の中の異端)への迫害に関連する古文書の一部を見つけたところから始まる。彼がこの発見を学会で発表したことから、彼の調査を邪魔しようとする何物かによって様々な事件が引き起こされる。そんな妨害にも負けず、彼は古文書の残りを追い、カタリ派弾圧の真実を突き止めてゆくといったミステリーである。中にフランス人精神科医との恋物語も織り込まれていて面白く、一気に読んだ。


カタリ派弾圧というのは歴史上の真実であるらしい。ローマカソリック教会の教義に反することから目の敵にされて信者は根絶やしとなり、カタリ派の痕跡は今では殆ど残っていないという。弾圧にまつわる報告書は、忌まわしい過去として、カソリック総本山バチカンの倉庫に秘蔵されているともいう。小説の中では、何代にも亘って身を隠していた信者たちが見つけ出され、生きたまま集団で焼き殺される場面が惨たらしく描かれている。


宗教上の思想や解釈の違いをお互いが決して認めず、終わりのない争いや弾圧が生まれる。宗教間、宗派間の争いは現代でも続いている現実だ。

年の初めには神社にお参りし、結婚式は教会であげ、葬式はお寺さんにお願いする・・・神も仏もキリストもみんな受け入れて、日常生活の中で並存させている日本人は利口だと思う。(2014.05.09)

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