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てげてげブログ
2016-05-20

922) 地裁判決

先週末、あれれと思う判決が東京地裁で出されたので、新聞の切り抜きをとっておいた。


『定年後、同じ会社に期限付きの嘱託社員として再雇用された男性3人が、定年前と同じ仕事をしているのに賃金が下げられたのは法律違反だとして訴えていた訴訟の判決である。

3人は運送会社で正社員として働き、定年退職後、1年間などの嘱託契約を結んだが、正社員時代と同じ仕事をしながら、給与や賞与が下げられ、年収は3割減った。

裁判長は「正社員と嘱託社員で職務内容や責任の度合いに違いがないのに、賃金額が異なるのは不当だ」とし、男性3人の主張を全面的に認め、会社側にそれぞれ100~200万円を支払うように命じた。』


正義感に燃えた若い裁判官が書いた判決で、どうせ上級審でひっくり返るのだろうとは思うが、地裁では時々世間の常識とかけ離れた、びっくりするような判決が出る。


年金財政の逼迫を背景に、年金支給年齢が60歳から65歳に引き上げられた。ところが企業の定年は60歳が一般的だった。これでは5年間の空白期間、無収入の期間ができる。そこで国は企業に対して、高年齢者の雇用維持(定年引上げや再雇用の導入など)を法的に義務づけた。

ところが企業側としては困った問題があった。これまで年功序列で上がってきて、能力以上に高額になっていた給与をそのままにして、60歳以降も雇用を維持したのでは、労務費の上昇に耐えられない。そこで生まれたのが給与を見直したうえでの嘱託再雇用制度という知恵であり、世間もそれを受け入れた。高齢者もそれを承知の上で再雇用に応じてきたはずだ。

裁判例のように再雇用後の給与が3割減はいい方だ。半減するところも珍しくはない。


裁判官の説く「同一労働、同一賃金」は一面の理想である。遠い将来にはそうなっているのかもしれない。しかしそのためには社会全体の意識が変わり、処遇制度、人事制度、賃金制度等々が変わらなければならない。そのためには長い時間がかかるだろうと思う。

今そこにある問題を解決するに当たって、そんな判決文を書いた裁判官は、いったいどういう人物なのだろうか、興味の湧くところではある。(2016.05.20)







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