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てげてげブログ
2015-09-11

799) おじいちゃん戦争のことを教えて

前回、『おじいちゃん戦争のことを教えて』という一冊の本に偶然出会ったことを書いた。読み始めるとぐいぐい引き込まれて一気に読み終えた。こんな本が17年も前に出版されていたことを不明にも私は知らなかった。

筆者の考え方、論点は明確であり、ぶれるところがない。引退したとはいえ、大企業のトップまでつとめ上げた人が、ここまで書いても大丈夫なのだろうか、どこかの国に遠慮しなくてもいいのだろうか、とこちらが心配になるほどである。この本はもう一度、今度はじっくりと読んでみたいと思っている。


私たちは先の太平洋戦争については、なんとなく一方的に日本が悪かったんだという空気の中で生きてきた。しかし、筆者は言う。

『 あってはならない戦争を、日本とアメリカはやったのだ。その責任は日本とアメリカ双方にある。日本は中国大陸に戦線を拡大して誤った。アメリカは日本を戦争以外の選択肢がないところに追い込んで誤った。双方がそういう過ちを犯したのだということをきちんと認識しなければならない 』


筆者の主張は広範にわたる。その中で、開戦のいきさつの部分だけを抜き出してみる。

『 アメリカはABCD(Aはアメリカ、Bはイギリス、Cは中国、Dはオランダ)ラインという包囲網を構築し、日本に経済制裁を加えてきた 』

『 ABCDラインの包囲網のやり方は、結果から見て稚拙だったというほかない。いや、アメリカはABCDラインの構築を日本を封じ込めることで妥協させるという意図でやったものかどうかさえ疑わしい、と私は思っている。アメリカは最初から、日本を戦争に追い込むつもりだったのではないか。日米開戦までの経過をたどると、そう思わざるを得ないのだ 』

・・・ABCD包囲網による経済封鎖は、日本経済を直撃した。石油、石炭や鉄鉱石などが入らなくなり、工業が細ってゆく、ひいてはじりじりと国民生活が圧迫されることになった。

困った日本はアメリカと交渉しようとした。包囲網を解いてもらうかわりに、中国大陸からの撤兵さえ考慮に入れていた。ところがアメリカはのらりくらりとするばかりで、交渉の場に出てこない。あげくは、突如、交渉相手のハル国務長官は駐米大使を呼び出して「ハル・ノート」という対日最終要求を通告した。アメリカの対日要求は、日本にとっては寝耳に水、予想もしないものだった・・・

『 アメリカの対日要求は、アメリカは一点の妥協もせず、いささかの犠牲も払わず、一方的に日本が要求を呑んで丸裸になれ、、と言っているのだ。しかも、日本が丸裸になれば、ABCDラインを解くというのではない。日本が丸裸になったら、その上ではじめて話し合いに応じようというのである。まるで目茶苦茶であることは、だれにでもわかることだろう。しかも、これが最後である、これ以外の条件はあり得ない、とハル国務長官は気色ばんだ 』

『 日本は追い詰められた。座して死を待つか、一戦を挑むか、二者択一の心境に追い込まれたとしても、無理はないだろう 』

『 日米開戦までの経緯をたどると、アメリカは最初から日本と戦争するつもりだったのだ、と私には思えてならない。戦争しか選択できないところに日本を追い込むことが、最初からの狙いだったのだ。もしそうでないというなら、交渉を求める日本にはかばかしい反応を示さず、「ハル・ノート」でいきなり理不尽な対日要求を突き付けてきたやり方は、外交交渉としては稚拙の最たるものだったといわなければならない 』


日本人の間でさえ、自分の国について、真珠湾攻撃でアメリカに一方的に喧嘩をしかけた悪い国という認識が一般的だ。そこに至るまでのこのような話はもっと知らしめていいと思う。

この他にも、極東軍事裁判について、日本国憲法について、戦後社会の問題点について、天皇について等々、迷いのない筆者の論調は歯切れがいい。(2015.09.11)

          画像 : 福聚寺入口

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