725) 人質問題への疑問
テレビも新聞も、イスラム国による日本人人質、後藤氏に関するニュースで溢れている。この問題に関しては出来るだけ口を開かないようにしている。私の感覚が世間一般からは大分偏っているように感じるからである。
後藤氏は自分自身の判断と責任のもと、危険を承知でイスラム国の勢力圏に入っていった人だという認識が、初めから私の中にある。だから偏ってしまうのかもしれない。
しかし物言わぬは腹ふくるるである。今日は禁を解いて、断片的だが私の疑問を並べてみたい。
〇マスコミ報道・・・マスコミが騒ぎ過ぎているのではないか。毎日毎日大きく報道するから、自らの存在をアピールしたいイスラム国の思うつぼに嵌っているのではないか。
〇政府の対応・・・国内外に他にも重要課題が山積している中で、政府内は上から下まで、この問題に拘わりすぎているのではないか。この問題はもっと粛々と進めていいのではないか。
〇人命尊重とテロの脅し・・・政府は「人命尊重第一」と「テロの脅しに屈しない」という二つの命題を掲げている。そもそもこの二つは真っ向から対立するもので、両立しえないのではないか。
〇テロの脅し・・・安倍総理は「テロの脅しに屈するようなことがあれば、日本人に対するさらなるテロの誘発を生み、卑劣な暴力を行使する者の意図がまかり通る世界になる」と表明している。イスラム国が求めている、ヨルダン死刑囚を解放することは脅しに屈することにならないのだろうか。
〇母親の愛・・・後藤氏の母親がやたらテレビに露出して、政府に向かって無事な救出を求めている。私が母親だとしたら、何よりも先にまずは息子が多大な迷惑をかけていることへのお詫びから入ると思う。そもそもこんな複雑な問題に、母親を引っ張り出してお涙頂戴を演出するテレビ局の認識を疑う。
〇日本政府に出来ること・・・自衛隊の出動で人質を奪還出来ないのは勿論、イスラム国に対して直接になんらの手も下せない日本政府としては、ただひたすらにヨルダン政府にお願いをするしか打つ手がないのが現実だ。
〇ヨルダン政府・・・日本政府が自国民の人質解放のために、相手国の死刑囚(過去の大規模テロ事件の生き残り犯人)を解放してくれと頼むことが果たして常識にかなうことなのかどうか私にはわからない。しかもヨルダンには国家としてもっと優先すべき人質がイスラム国に囚われている。好意的にやってくれるならいざ知らず、強制できることではないだろうと思う。協力するのが当然と思ってはいけないし、結果がどう出ようともそれまでの協力に対する感謝の気持ちを忘れてはいけないと思う。
〇かけひき・・・72時間以内、24時間以内、日没までと制限時間は次々に延びている。巨額の身代金から人質交換へと取引材料も変化している。そこにはヨルダン政府とイスラム国の難しい駆け引きが展開されているのだろう。(2014.01.30)