958) イスラム
イスラムのことはほとんど何も知らない。知らないけれど気にはなっている。ついつい、本屋で目に付いたイスラムに関する新書本を2冊も買ってしまった。
1冊は『イスラムの読み方ーーその行動原理を探る』というもので、本の大半は思想家で碩学の山本七平さんと外交評論家である加瀬英明さんの対話で構成されている。
読んでみたが、内容が複雑なうえに哲学問答みたいな対話が多くて、脳軟化症気味の私の脳味噌には理解の及ばない内容が多かった。もう一度じっくり読み直してみようと思っている。
ここでは本の帯に書かれた文章の幾つかを拾って、表面だけでもなぞってみたい。
「なぜ、イスラム社会は近代化が進まないのか?」
「なぜ、民主化が根付かないのか?」
「なぜ、テロが止まらないのか?」
「人と人との契約という概念が、元からない」「アラブ世界に一物一価の法則は適用しない」「勤労的人間は、人間のクズ」「もともと民族国家もなければ、国家意識もない」「宗教法があって、国法が機能しない社会」「アラブにもユダヤにも、清貧という発想はない」
本の最後を締めている加瀬氏の以下の文章が印象に残ったので書き留めておく。
「いま、北アフリカからイランまで、イスラム圏が百年に一回の大津波に襲われている。」
「新しい中東が誕生するまで、中東は大きく揺れよう。まだ序章が始まったばかりのように、思われる。」
もう1冊は『中東複合危機から第三次世界大戦へーーイスラームの悲劇』という恐ろしげな書名の本。著者は大学教授の山内昌之氏。
まだ読み始めたばかりだが、のっけから刺激的な文章が目に飛び込んでくる。
「中東では『戦争こそ日常であり、平和は非日常』という権謀術策の渦巻く遺憾な現実が存在する。」
「これまで西欧が振りかざしてきた近代主義的な概念や意味がどの地域でも成立する条件は、もはや失われつつあるように見える。自由や人権や民主化といった米欧の価値観が必ずしも中東やアジアで巧く機能していないのだ」
ジハード、自爆テロ、内戦、難民、宗派戦争、民族紛争、シーア派、スンニ派、クルド人、アルカイダ、IS、ボコ・ハラム・・・イスラムをめぐる現在の混乱はそれほど簡単に片付くものではなく、残念ながらまだまだ続く現象だ、と考えた方が良さそうだ。(2016.07.22)