自宅の近く、歩いて15分ほどの所にうどん屋さんが出来た。数ヶ月前のことである。黄色い外壁塗装や直線的で洒落た構造のうどん屋らしくない建物がずっと気になっていた。駅からの大通りには黄色い大きな看板が二つも立ち、これも目立っていた。店の名前は『こも庵』、さぬきうどんを食させるという。

　　一度行ってみたいと思い、休日に何回か車で通ってみたが、駐車場の門扉がいつも閉まっている。朝夕、通勤の途中、バスの中から覗いてみたがいつでも閉まっている。ともかく店が開いているのを見た事がない。
　　この店はまだ開店していないのだろうか、開店早々潰れたのだろうか、途中で資金が行き詰まったのかもしれない、もしかしたらうどん好きの粋人が気の向いた時だけ開店する趣味の店かもしれない・・・色々と想像をたくましくしていた。

　　気になり始めるとますます気になってくる。先日、土曜日の朝、歩いて調べに行った。門扉に　『11時開店～15時閉店。日曜日は定休』　という札がかかっていた。これまで何回も覗いたが、その都度閉店時間帯だったのだ。いつも閉まっていたはずである。
　　早速当日の12時頃、妻を誘って食べに行った。きちきちと歯ごたえのある麺がとても美味しかった。店内は隅々まで掃除が行き届いて綺麗だった。店員さんはみんなぴちぴちと動いていた。「いらっしゃいませ、ありがとうございます」と揃った声に元気が溢れていた。

　　帰りのレジで聞いた話である。『こも庵』は近くにある『知的障害者授産施設・こもれび学園』の付属店舗で、職員が援助しながら知的障害者が運営しているのだという。したがって開店時間帯も休日も施設に合わせているのだそうだ。これまでの疑問が、なるほどと納得できた。そんなお店なら応援しなくちゃという気持ちになった。
　　また行こうと思いながらも、このところ土曜日がずっと詰まっていて果たせていない。（2012.06.27）