2014-01-30
533) ジャッカルの日
裏表紙には『フランスの秘密軍事組織OASは、6回にわたってドゴール暗殺を企てた。だが失敗に次ぐ失敗で窮地に追いこまれ、最後の切り札、凄腕のイギリス人殺し屋を起用した。暗号名ジャッカル――ブロンド、長身。射撃の腕は超一流』と案内してある。
下手な読後感を書くより、巻末の訳者『あとがき』を抜粋、転記する。
『1970年、動脈瘤のため79歳で世を去ったシャルル・ドゴール元仏国大統領ほど、波乱の生涯をおくった国家元首は、現代史でもめずらしい。戦後の彼を導いたのは、祖国フランスとヨーロッパに昔日の栄光と隆盛をもたらそうという燃えるような野心だった。ただあまりにも強烈な個性のゆえに、心酔者と同時に敵もまた多かった。大統領に就任したドゴールがまず解決を迫られたのは、アルジェリア問題で、革命ー独立をめざす民族解放戦線の動きはとうてい抑圧できない状態にあった。それは歴史の流れでもあった。鋭い洞察力でこのことを見抜いていた彼は、アルジェリアを放棄する政策を着々と進めていった。しかし、軍部や右翼がこれを認めるはずがなかった。・・・・・アルジェリア派遣軍の中堅将校と右翼の一部とが結成した秘密軍事組織OASは、実に前後6回にわたってドゴールの暗殺を企てた。・・・・・ロイター通信の特派員としてパリに赴任し、日本流にいえばドゴール番となっていたフォーサイスが、これら一連の暗殺事件に興味を持ったのは当然である。・・・・・この作品の最大の特徴は、事実とフィクションが渾然一体となっていることである。事件や登場人物のあるものは現実に起り、実在している。たとえば冒頭のプチ・クラマール事件が一例であり・・・・・ところでフォーサイスは、この作品のどこまでがフィクションで、どこまでが事実かという質問に対して「答えは私の頭の中にしまってある。今後ともそれを明らかにするつもりはない」と答えている。・・・・・』
まことに面白かった。殺し屋による狙撃計画は、すんでのところで失敗するのだが、そこに至るまでの特に後半のスリリングな展開は、そのスピード感と相俟って息をつかせぬ迫力があった。
難を言えば、文庫本の活字がことさらに小さくて、老眼鏡のお世話になる身としては読み辛かったことである。
以下は個人的な蛇足である。問題の発端であるアルジェリアに愚息が赴任していることや、陰の主人公であるドゴールがラ・サール修道会の経営する学校の卒業生であること(ラ・サール高校時代の担任教師の言)が、本屋でこの小説を選ぶきっかけになった。(2014.01.30)