652) 日本人拘束事件
シリアの紛争地域で、日本人が拘束、拉致されてからもう10日ほどが経つ。「イスラム国」というイスラム過激派に捕まって、映像つきのニュースが流れた時には驚いた。てっきりジャーナリストか写真家だろうと思った。
ジャーナリストという人種は、身の危険を敢えて冒してまでも、事実を報道したいのだろうとその使命感に頭が下がった。普段何気なく見聞きしているニュースの裏にもそんな危険が隠れているのかもしれないとも思った。
ところがその後の報道内容は、そんな私の想像とはいささか趣が異なるのである。彼は今年1月に日本で「民間軍事会社」を設立し、その最高経営責任者であるという。会社のホームページには、業務内容として「国際民間軍事業、国外警護、紛争地域等での護衛」と記載されているらしい。また現地で知り合った一人のジャーナリストに対して「設立した民間軍事会社は出来たばかりで実績がない。経験を積むためには現場を見なくてはダメだと思って一人で来た」と話したという。
要するに危険で怪しげな仕事で一獲千金を夢見る、人騒がせ野郎ということになる。しかし物事はそんなに単純なのだろうか。
まず「民間軍事会社」という事業が果たして成り立つのだろうかという疑問が湧く。隊員として雇っても、大部分の日本人は銃を扱ったこともなく、役にたちそうにもない。また平和ボケして豊かになった日本人が、自ら戦場に行くとも思えない。それとも、外国人を雇うつもりなのだろうか・・・。
費用の問題も疑問だ。彼は現地に何回か行き来しているようだが、その費用はどこから出ているのだろうか。自ら出資できるほどに金持ちなのだろうか・・・。
「イスラム国」と対立する反体制派組織「イスラム戦線」が、人質交換も含めて釈放に向けた交渉をしていたが「交渉を完全に拒否された」という報道も目にした。「イスラム戦線」がどうしてそこまで彼に肩入れするのだろうか・・・。
日本政府はどうしているのだろうか。日本人である限り、知らんぷりは出来ないだろう。秘かに水面下で解放への努力を続けているのだろうか・・・。もしも身代金の要求があったら、誰がどうするのだろうか・・・。
どうもすっきりしない事件である。(2014.08.27)