1292)優良認定と適正認定
我が国には、人材紹介業界全体のレベルアップを図るために、厚生労働省が後ろ盾となって創設された、二つの似通った資格認定制度がある。
一つは2014年度に「民紹協(全国民営職業紹介事業協会)」のもとで創設された「職業紹介優良事業者認定制度」(略称:優良認定)である。当社も自らの事業内容のレベルアップを図ろうと、早い時期に認定申請をし、厳しい審査を受け、認定を受け、3年ごとの更新もしてきた。
もう一つは2021年度に「人材協(日本人材紹介事業協会)」のもとで新しく創設された「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」(略称:適正認定)である。適正認定制度は優良認定制度を手本に制度設計されたと言われている。
このように趣旨も中身も似たような二つの制度がなぜ併存しているのだろうか。民間の一事業者が立法や行政の何故を知る由もないのだが、勝手な推測は自由だろうと思う。
「優良認定」の方は、法律や基準に沿った、行儀のいい事業の運営を指導・誘導したい政府の意向と業界全体のレベルアップを目指す業界団体の意向が合致した産物ではないか、いわば自然発生的に生まれたのではないかと思う。しかし、認定を受けても営業上のメリットがなかったものか、その後、認定業者はあまり増えず、どころか当初より減少して、今では35社にとどまっているという。
「適正認定」の方は、誕生の経緯からして少し違うのではないかと推測する。医療・介護・保育と特別に分野を指定したところがミソだろう。この事業分野の管理者から発生した、人材紹介業者に対する不信・不満を解消するために誕生した制度ではないかと思う。
この分野は国家試験等、資格に守られた職業分野であり、逆に資格さえ保持していれば転職の容易な分野でもある。従業員も転職に対して違和感が少なく、不満があれば割と簡単に転職を繰り返している。一方で過酷な労働条件に晒されて、昔から労働条件改善の必要性が叫ばれてきた分野でもある。
そんな労働環境の中からは、自社で転職を世話しながら、あまり日の経たぬうちに別の転職先を勧めるという、いわば商道徳に反する業者が生まれる可能性は高いのかもしれない。採用の手間をかけ、紹介料を払い、短期間で引き抜かれる施設の怒りは察するに余りある。
寄り道が長くなってしまった。取締役会では「優良認定」も「適正認定」も両方を申請し、取得することに決まった。手間はかかっても、手間に倍するメリットが生まれるだろうというのが結論だった。勲章は幾つあっても邪魔にはならないものだし、チャレンジ精神旺盛な前向きの結論を導くことが出来て良かったと思う。
(2023/07/04)