2023-07-05
1293)老醜を受けとめる
我が家の洗面台の前には、大きな鏡がはめ込んである。だから、毎朝、いやでも自分の裸の上半身と対面することになってしまう。
まず最初に大きなお腹が目を引く。コマーシャルでやっているもっこりお腹ではない。下腹部だけが大きく、だらんと垂れ下がった、脂肪の塊のようなお腹である。昔はそこに腹筋の割れ目が見えていたはずだ。次に胸板に目が行く。あったはずの筋肉が雲散霧消して、表面の皮膚だけが貧相に垂れ下がっている。腕は逞しかった力こぶを失い、役に立ちそうもない細腕に変わっている。肩も筋肉を失い、骨が突き出て、尖った肩に姿を変えている。
加齢に伴うこれらの変化は、あらかた筋肉の消失がもとになっているように思える。そしてこれらを包み込んでいた皮膚は艶も張りもなくして、皺だらけ、かさかさの皮膚に変身している。
こういう姿を老醜と言うのかもしれない。しかしこの身体は、80年以上に亘って色々な病魔と闘い、私の命を支え続けてくれたその名残でもある。長年闘い続けた老兵の今の姿を、愛しいと思わなければ罰が当たる。
(2023/07/05)