梅雨明け宣言はまだ出ていない。だが暑さはもう夏だ。私が出勤する時、朝のまだ早い時間に、公園の木々からはセミの声が湧きたっていた。通勤バスや電車の中は十分に冷房が効かず、汗ばむ暑さだった。今、窓の外の日差しはガンガンと人を射している。陽射しと表現する方が正しいようだ。

　今私たちは、事務所で空調に守られて、快適に仕事ができる。大学を出て就職したてのころ、50年以上前のことだが、私の会社の本社事務所には冷房が入っていなかった。それが当たり前の時代だった。

　夏は暑かった。窓を開けると突然の風が書類を奪っていくので、窓を締め切っていた。水にぬらしたおしぼりで噴き出る汗を拭きながら仕事をこなした。一日汗を拭くと、おしぼりは異様なにおいを発するようになった。

　事務所に冷房が入って大喜びしたのは、入社して何年経ってからだったのか（？）今では製造現場を含めどこでも、空調完備が当たりまえになっている。幸せな時代になった。そのために地球温暖化が進むという反作用が出現した。幸せの裏側にある不幸せを私たちは後になって気付くことが多い。だからと言って、空調のない昔の生活に戻ることは出来はしない。

　　　　　　　　　　　　　　　（2023/07/13）