1423)壮年と中年
電車の中では退屈だからたいてい本を読んでいる。今読んでいるのは沢木耕太郎の「バーボン・ストリート」である。今朝よんだところに次のような文章があり、ちょっと気になった。長くなるが引用する。
『ひとりの男が生まれ、老いて死んでいくまでのあいだには、さまざまな呼ばれ方をする時代をくぐり抜けていくことになる。まず幼年期と呼ばれる時代があり、やがて少年期に向かい、青年期を過ぎ、壮年期に入り、ついに老年期に到る。幼年、少年、青年、壮年、老年。・・・最近は壮年という言葉をあまり耳にしなくなった。そのかわりに使われるのが中年という、どこかに疲労感をにじませた言葉である。現代の青年は壮年にならずに中年になっていく。しかし、彼はいつ青年であることをやめて中年になるのだろうか。』
何故、壮年が廃り、中年が盛んになったのかについて彼は触れていない。気になって、身近にある国語辞書で壮年と中年を引いてみた。
(角川 必携国語辞典)
壮年:30代から50代ぐらいまでの働きざかりのころ。類語=中年・盛年
中年:青年と老年の中間の年齢。40歳から50歳ごろ。「中年にさしかかる」「中年ぶとり」類語:壮年・盛年
(三省堂 新明解国語辞典)
壮年:人を年齢によって分けた区分の一つ。社会で活動する、身も心も盛んなころ。30代中期から40代の後半ぐらいまで。
中年:人を年齢によって分けた区分の一つ。50代から60代の前期にかけての年。「中年ぶとり」
辞書によって年齢の当てはめが若干違うものの、どちらの辞書からも感じられるのは、壮年という言葉は活動が盛んな場面で使われ、中年という言葉は停滞した場面で使われるらしいということだ。
高齢化により元気な年寄りが増え、30代、40代、50代といった年代の活躍の場が少なくなったのではないだろうか。そのことが、壮年という言葉をあまり耳にしなくなった原因ではないだろうか。辞書を引きながらそんなことを思った。調べてはみたものの、どうでもいいことである。
(2024/02/01)