2024-05-30
1492)妻の子育て
元気なころ、7~8年前まではしっかりした妻であり、母親だった。仕事にかまけて育児や家事を手伝わない夫を責めもせずに、3人の息子を立派に育て上げた。誰一人学習塾に通わせることもなく、3人とも東京大学に入学させ、卒業させた。息子たちは3人とも小学生の頃からサッカーに明け暮れた。サッカーの試合にはどんな遠方であれ駆け付けて応援したけれど、「勉強しなさい」と叱る母親ではなかった。
東京で学生生活を送る子供たちの学資や生活費を稼ぐためにパートとして働きに出た。特技を持たない妻が従事出来たのは、製造現場の倉庫作業や巻き線作業などが主な仕事だった。職場環境の悪い化学工場で気分を悪くして倒れ、救急車で運ばれたこともあった。
妻が自分自身をを注ぎ込み、育て上げた三つの作品が、これからようやく実を結ぶという時になって、妻はその果実を見ることも理解することも出来なくなってしまった。「お母さん、よく頑張ったね」と言ったら、少しは喜んでくれるだろうか。
昨日の妻の様子を見つめながら、そんなことを思った。
(2024/05/30)