2008-11-21
10)通勤読書 2008.11.21
これまで時代小説というのはあまり読んでいませんでした。何となく古臭いような気がしていたというだけの理由です。しかし藤沢周平を読んでみると、設定された時代こそ古いものの、今現在が描かれているような、そんな気持ちにさせられます。古い材料を使って、今を料理していると言えばいいのでしょうか。もっと言えば人間模様は昔も今も変わらないのかもしれないという気がします。それに風景や気候の描写がとても綺麗で生き生きしていて、小さい頃の自分の郷里の情景をふっと思い浮かべてしまいます。
長編より短編の方が私は好きです。テンポが早く、歯切れが良くて、読みやすい。直近では『よろずや平四郎活人劇 上・下』が面白かったです。旗本の子弟ではあるものの、亡き父親が台所働きの下女に生ませた子。祝福されない冷や飯喰い。生家の冷ややかな空気に思い屈し、家を出て裏店に住みつくが、収入がない。さっそく生活に窮した末に思いついたのが、有料のもめごと仲裁業。『よろずもめごと仲裁つかまつり候』という看板を掲げ、面白おかしくも悲哀に満ちた庶民のもめごとを解決していくという筋書き。有料の仲裁業(そんなものがあったのでしょうか?)という着想、時々は秀でた剣技を使ったりもするけれど、なにがしかのお金で金銭解決してゆくという現実的な解決法-----感心しながら読みました。藤沢周平さんとの付き合いにはもう少し時間がかかりそうです。