2010-04-21
160)わが子虐待 2010.4.21
我が家には猫が2匹いる。母親(シロ)とその息子(トラ)である。シロが18歳、トラが16歳と、人間なら100歳前後の相当な高齢猫である。
シロはいずこからともなく迷い込んできて我が家に住み着いた猫。トラはそのシロが我が家のリビングで、妻にお腹をさすってもらいながら出産した猫。だから産んだその日から今に至るまで、シロの子育ての様子は細大漏らさず見てきた。
目も開かない幼子の首筋をくわえて箪笥の上や、家具の隅っこや、あっちこっちにわが子を隠す姿。愛しげにお乳をやる姿。舐めて毛並みを整えてやる姿。引き連れて近所を巡回して回る姿。
トラがちょっと大きくなってから、狩を教え込む姿は感動的だった。シロは訓練用の獲物をくわえてきては、座敷に放す。とたんに座敷は狩猟場になる。トラに獲物の狙い方、近づき方、腰の振り方、捕まえ方を訓練するのである。最初はヤモリやトカゲ等の動きの遅いものから始まった。次はバッタやコオロギ等の跳ぶもの、そして蝶や蛾等の飛ぶもの、最後にはスズメやメジロ等の鳥。当時の我が家は、家中に動物の死骸が転がり、鳥の羽根が飛び散っていたものである。成果あって、トラは狩猟の名人(猫)に育っていった。
トラがいっぱしのおとなになってからのシロは遠慮気味である。陽だまりのお気に入りの場所で気持ち良さげに昼寝しているシロ、なのにトラが近づいてゆくとシロはその場所をトラに譲って他所に移って行く-----例えばそんな姿をよく見かける。母親として息子をたてているのか、女として男をたてているのか-----それは分からない。
老境に入った今も、シロとトラはとても仲良しである。しょっちゅうお互いを舐めあっては愛情の交換をしている。夜はソファーの上で抱き合って眠っている。
猫を人間と比べては不謹慎かもしれない。しかし、本能のおもむくままだとこんなにも子育てがうまくいくのに-----とついつい思ってしまうのである。