夕方、Ａさんから突然電話があった。
7月初旬に転職のお手伝いをした男の薬剤師さんだ。
そのＡさんが明日辞めるという電話だった。
何らかの予兆があったわけではない。
まるで突然の話である。
何が原因なのか、聞いてもよく分からない。
特別の事件があったわけでもないようだ。
何があったにせよ、明日辞めるというのは尋常じゃない。
色々説得してみたがまるで聞く耳をもたない。

その時点で社長にはまだ何も言ってないとのことだ。
明日出社し、その場で保険証を返却して辞めてくるという。
明日の明日では会社も困るに決まっている。
後任者だってすぐには補充できないだろう。
聞き分けのない小さな子供ならまだしも、と思う。
60年もの人生でこの人は何を学んできたのだろう。
世の中の常識を持ち合わせていないのだろうか。

紹介した側として責任を感じている。
しかし求職者と接触する時間はそれほど長くはない。
その間に人物を見透す力を養わなければならない。
それは決して生易しいことではない。
奥の深い仕事である。

怒り心頭に発した社長の気持ちをじっくり聴かせて貰った。
そして、ただただお詫びした。
今はそれしか出来なかった。
　　　　　　　　　　　（2013.10.25）