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てげてげブログ
2014-01-22

527) 猫またぎ

  『猫またぎ』という言葉がある。国語辞典によると『きわめてまずい魚のこと。魚の好きなネコでさえまたいで通り越す意』と解説されている。
  辞書には載っていないが、猫またぎという言葉にはもう一つの意味があるらしい。『猫でさえ食べる余地がないほど綺麗に食べられた状態の魚、ひいては、魚を骨だけにしてしまうような箸遣いの持ち主』という意味だという。

  最近は家庭で魚をまるごと調理することはほとんどなくなった。スーパーのパックに包まれた切り身や刺身を食すのが普通である。背骨や頭骨の間から身をせせり、小骨を除けて食べるという楽しみはあまり経験しなくなった。こんな状態だから猫またぎの二つ目の意味が辞書に載らなくなったというのも無理はないと思う。

  猫の方にも責任がありそうだ。昔の猫はよく魚を盗んでいた。私は港町で育った。猫にまな板の上の魚を丸ごと盗まれて母親が追っかけている光景が思い浮かぶ。床下には綺麗に骨だけになった魚が落ちていたものだ。サザエさんの漫画にもそんな場面が描かれていたという記憶がある。

  ペットフードに慣れた最近の飼い猫は魚を盗んだりはしないようだ。我が家でも数年前まで2匹の猫を飼っていた。彼らは魚を丸ごと鼻先に置いてやっても、キョトンとしていた。こりゃなんじゃという風情であった。食べ方を知らなかったのだろう。刺身を小さく千切ってやると美味しそうに食べていたから、魚の美味しさは知っていたのにである。

  まあ、人間も猫も時代とともに生活様式が変わる。つれて言葉も変遷する。(2014.01.22)

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