2014-01-21
526) 隣国
ちなみに著者の石平氏は中国人。北京大学を卒業後日本に留学し、神戸大学大学院博士課程を修了。現在は日本を拠点にして日中関係や中国問題を中心とした評論活動を展開、テレビでも活躍している。07年には日本国籍を取得。
彼のいわく、2000年以上にわたる日中関係史全般を通して『いつの時代でも、中国大陸に近づきすぎたり深入りしすぎたりすると、日本には必ずや何らかの災難が降りかかり、不幸が訪れる』『逆に中国大陸から遠ざかって緊密な関係をもたないとき、あるいは中国王朝との交渉を中断したとき、国内は安定し、長期的な繁栄を享受できた』『日本の政治権力との関係からいえば、日本の歴史上、中国と濃密な関係をもち、中国に深入りした政権は往々にして短命に終わっているのに対して、中国と一定の距離を保った政権は長持ちする、という不思議な現象がある』という。
具体的には『清盛の平家政権、室町の幕府政権、秀吉の豊臣政権と、中国に接近して関係をもった政権がことごとく短期間で崩壊したのに対し、中国と没交渉か関係の薄い平安時代や江戸時代においては安定した繁栄の時代が出現した』という。
明治維新以後についてみても、明治期は『敬遠中国』『脱亜入欧』を徹底的に貫き、文明開化に励み、その結果米欧に比肩すべき目覚しい近代化を実現した。これに比べて、大正・昭和期においては『アジア主義』『大東亜共栄圏建設』を夢見て中国に深入りした結果、満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと突っ込んでゆき、敗戦にいたった。
さらに戦後についても、1978年までの30年間、日中無交渉の時代には奇跡の高度経済成長を成し遂げ、安定と繁栄の時代を築いた。ところが1978年、日中平和条約を締結し、拙速な国交正常化をはかった結果、尖閣問題の火種を抱え、靖国を含む歴史認識問題で苦しむこととなった。
これらの歴史的法則性に照らしても、これからの日本は脱中国を前提にした国際戦略を描くべきであると石平氏は主張する。
身近な近所付き合いにおいても、隣家の内情にあまり踏み込むとおかしなことになる。「や、どうも。いい天気ですな~」と挨拶を交わすという程度の付き合いがいいのかもしれない。(2014.01.21)