2014-03-12
558) 指切り
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日本人には契約の観念がなく、はかない約束に心情をそそぎがちだと、評論家の故・多田道太郎は言った。一例が<指切り>という。<人と人をつなぐものではあるが、そこで結ばれる約束はしばしば裏切られる。指切りは指切りであって約束ではない。他国民には理解されない日本人のふしぎなしぐさである> (『しぐさの日本文化』講談社学術文庫)
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ビジネスの場面では、小さな取引でも契約書を交わすのが当たり前だ。万が一、約束が履行されない時にどう対応するのか、訴訟になった時にこの契約書の内容で十分なのか、常に考えておかざるをえない。
しかし、プライベートな世界における約束については、指きりのような情緒的曖昧さが残っていてもいいのではないかと思う。そんな社会の方がほのぼのとして生き易いような気がする。
たとえ他国民には理解されないとしても、たとえ時には相手に裏切られるとしても、である。(2013.03.12)