昨日、日曜日、猛暑・炎天下、面会の予約をして妻との面会に出掛けた。1週間ぶりの面会だ.。はじめのうち、会っても何の反応もなかった。「こんにちは」と話しかけても、厳しい怒ったような表情を崩さない。困ったな、今日はだんまりの日かな、と覚悟した。

　暫くするとお経のような節をつけて独り言をしゃべり始めた。表情も少し穏やかになった。頃合いを見て、今日の目的であるお盆の計画を伝えてみた。

　「もうすぐお盆が来るよねぇ。お盆休みにね、太郎くんがお母さんに会いに帰って来るそうだよ。昨日、太郎くんから電話があったんだよ。」「そうね、良かったね。」

　「次郎くんの方はね、仕事柄ね、東京を離れるのは難しいそうだよ。年中365日、昼も夜も、30分以内に職場に駆け付けなければいけない仕事なんだってよ。そんなんじゃ～帰れんわね～。」「ふ～ん。そうね。」

　「三郎くんはね、むつしい予定が重なって帰れんみたいよ。」「ふ～ん。」

　私の報告の意味がどこまで通じたのかは分からない。しかし短い時間だったとは言え、一時的に会話が成立したのは間違いないだろうと思う。今日は調子が良いようだ。妻は暫く黙っていたが、次に彼女から発された言葉は不思議なものだった。「太郎くん、美味しいやろうね。」だったのだ。私からは、食べることに関して一言も喋っていない。多分美味しいものを一緒に食べた、過去の記憶でも蘇ったのだろう・・・と解釈した。

　それからまた独り言の世界に戻っていった。

　帰り際、妻が玄関で「帰りなさんな、此処にいなさい」というような強い言葉を発したのが、心残りだった。

　　　　　　　　　　　　　（2023/07/31）