2012-09-11
427) 旅立ったシロ
「シロが死んだよ。30分くらい前だったよ。」
シロはソファーの上に眠るように横たわっていた。
おだやかな顔で、薄目を開けていて、まるで生きているようだった。
妻の掌に前足をゆだねたまま、静かに眠るように死んだそうだ。
足が冷たくなってきたので気付いたという。
急いで心臓を触れてみたらもう動いていなかったとのことだ。
苦しむこともなく本当に眠るような旅立ちだったという。
昼間は勝手口の靴脱ぎや庭のテラスの上に座って、
じっと外を眺めている時間が多かったそうだ。
何かを思い出しているような風情だったとか。
猫にも追憶に浸るというような感覚があるのだろうか。
雨が降り始めたので妻が居間の中に抱き入れた。
居間ではお気に入りの寝場所をひととおり巡廻した。
巡廻を済ませたら、ソファーに上がってきた。
上がるにも、力がなくてずり落ちそうだった。
そこを死に場所と定めたのか、ほどなくあの世に旅立った。
・・・妻が話してくれたシロの最後である。
明日は動物霊園で火葬してもらう。
いよいよシロはあの世に旅立つことになる。
あの世でシロは・・・
先立った息子のトラや仲良しのクリと再会するだろう。
3匹の楽しげな再会場面が目に浮かぶようだ。
一方、我々夫婦はこれから二人きりの生活をおくることになる。
子供も犬も猫もいない、そんな二人きりの生活は初めての経験だ。
(2012.09.11)