人間は生まれてから成長過程を経て、やがて老化する。当たり前の話だが、街にも成長と老化があるようだ。
　　今の団地に引っ越したのは、もう30年近くも前のことだ。開発されて間もない団地だった。

　　家が建っている区画よりも、空き地の方が多かった。最寄り駅までのバスの便数が少なくて、通勤には苦労した。開店して間もない2階建てのスーパーマーケットの売り場面積は狭く、テナントが少なくて空きスペースが多かった。2階には何もなくて立ち入り禁止になっていた。

　　次々に家が建ち、公園で遊ぶ子供たちの声が響き渡り、路線バスの本数が大幅に増え、メーン道路には店舗が立ち並んだ。飲食店も増えた。スーパーは売り場が広がり、1・2階ともにテナントで満杯になり、お客がごったがえすようになった。成長期だった。

　　ちかごろ公園に子供の声がしなくなった。住んでいるのは年寄りばかりだから当たり前のことだ。気が付いてみると、メーン道路の商店街にも変化が起きている。シャッターの下りた商店が目に付くようになり、空き地が目立つようになった。贔屓にしていたパン屋さんは、少し離れた新しい団地に移転していった。洒落た雑貨屋さんもそちらに引っ越したそうだ。

　　この街はこれからますます老化してゆくのだろう。人間と同じく老化を止めることはできないのだろうと思う。その中で、せめてスーパーだけは閉店しないで欲しいと願っている。年老いた人間どもの買い物の便のために。（2014.02.14）